10話:帰館・そして新たなるスタート

 

 長いようで短かった、あのイベント(策略)から帰ってきた。
 そのときに一緒に行ったメンバーが全員戻ってきている。
 いや、違う。新たに来た仲間も一緒だった。
「ここで過ごすのも、ずいぶん懐かしいな〜。」
 ルイージは過去にここにいたことがある。その時を思い出したのか、少し涙ぐんだようにも見えた。
(ま、あいつらが前と変わっていない、てのはわかってるからね!またよろしくね、ルイージ!!)
 プリンもそうだ。彼女は楽観的で、何事も他人任せといえる。一瞬ルイージの顔が白くなった。気がした。
「ここがそうなんだね。初めてだから、どうなってるんだろ?」
「騒がしいのは嫌いだ・・。」
 マルスにロイ、こどもリンクははしゃぎ気味で、ミュウツーはあまり気乗りしなさそうだ。
「・・庶民の生活というのも興味深いな。」
「素直に『楽しみだな』と言えよ!」
 ガノンドロフのセリフにリンクが素早くツッコミを入れる。
「フム、コレハコレハ・・・。」
 ゲームウォッチは何を思っているのかわからない。表情が見えないからだ。黒いから。
「う・・・・・・・・・・・・・・。」
 さっきからファルコが真っ青な顔で歩いている。
「おいおいファルコ、大丈夫か?」
 フォックスが慌てて駆け寄る。
「あははー。やっぱファルコって船苦手なんだぁ!」
「さっきから船の外に出てさ、青い顔で外眺めていたわ。」
 ポポとナナにも言われてしまった。
「黙ってろ!ガキども!!」
「おいおいファルコ、あまり大声出すと・・・。」
「う・・・・・・・・・・。」
 ファルコはそのまましゃがみこんでしまった。口を手でおさえている。
「は、はやくカギ開けて!!」
 ルイージのひとことにファルコンが大急ぎでカギを開ける。
 カギが開いたとたんファルコは猛ダッシュでトイレへ駆け込んだという・・・。

「ところでさ、今部屋はどうなってる?」
 ルイージが不意に聞いてきた。
「ああ。自室なら今はみんなが勝手に使ってる。ほとんど前と変わらないがな。」
(ねぇ、ちょっと相談なんだけどさぁ・・。)
 マリオの会話を遮ってピカチュウが顔を出した。
(プリンもピチューも来たしさ、僕ら大部屋へ引っ越すよ。いいでしょ?)
「あいつらと話はついてるのか?」
(当然!どうせ誰も使わないでしょ?)
「まあ・・使ってるの、ポポとナナくらいだしな。あのマセガキども、一緒の部屋にしやがって・・。」
 マリオがおもしろくなさそうに言う。なんかムカツクらしい。
「いいんじゃない?他に使う人、いないと思うし。」
(やったぁ!部屋、あけとくね〜。)
 ピカチュウはさっさと行ってしまった。
「で、部屋割りはだいたいどんな感じ?」
「ん〜、2階が俺ら男どもが主に使ってる。3階は女性や子供らが使ってるぞ。」
「そう。なるほどね。」
 マリオの説明からルイージは納得したようだった。
「あ、そうだ。俺んとこの向かいの部屋、空いてるぞ。」
「兄さんの向かい・・というと・・。」
「隅の部屋だ。前と同じように、リンクの部屋のとなりだ。」
「・・あそこ、あけておいたの?」
「なんとなくな。前にお前が使っていた場所だし、誰もあの部屋を取らなかったんだ。」
「よく言うわ。ワガハイがあの部屋を使おうとしたとき、お前とリンクとかいう小僧が『ここはダメだ』 とか言って別の部屋にまわしたくせに。」
 いつの間にか後ろにクッパがいた。
「は?そうなの?」
「ああ。お前の部屋だったのか。せっかく空けてやったんだから、使うがいいぞ。」
「えらそうだな〜、おまえ。」
 素っ頓狂な声をあげるルイージ、少々威張りぎみのクッパ、それに文句をつけるマリオ。
 マリオとクッパがケンカを始めるのを無視して、ルイージは後ろを向いた。
「それじゃ、そういうわけだから、空いてる部屋を取っていいよ。」
 ルイージは新人たちにそう言った。
「どこ行く?」「僕らは2階へ行った方がよくない?男だし。」「3階も少し空いてるけど・・。」
 上へ行く人たちの話し声が次々と聞こえてくる。
「ところで、お前ら荷物はどうしたんだ?来るときに持ってきているとは思えないんだが。」
「ああ。それならここへ来る前にこっちに送っておいたんだ。みんなの留守中にね。」
「・・・なるほど。」
 マリオは納得する答えを聞いた。

 ひととおり片付けがすんで、何とか落ち着いたところだった。
 ルイージが冷蔵庫の中をじっと見ていた。
「・・・材料が足りないね。買い出してこないと。」
「おっ、さっそく主夫ぶりを発揮したわね!」
 ピーチがちょっとからかう。
 ルイージは聞いていないフリをした。
「買い物行くの?僕もいっしょに行く!」
「ひさしぶりだね〜。いままでずっといってなかったから〜。」
 ネスとカービィの2人がついて行きたがっていた。
 彼らはスーパーで買い物によくついてくるのだった。
「え?僕がいない間、スーパーとかには行かなかったの?」
「うん。ピーチさん、ご飯作らないから、いつもレストランでテイクアウトしてもらってたから。」
「ちょっと!!人聞きの悪いこと言わないでよ!誰もやらないから今までこうだったんじゃないの!」
 ネスのひとことにピーチが食って掛かる。確かに、誰もやろうとしなかったのだが・・。
「でも、テイクアウトばかりじゃバランス悪いから。・・また僕がやることになるのか・・。」
「頼りにしてるぜ!ルイージさんよ!」
「ファルコン!調子に乗らない!!」
 ルイージを軽くからかったファルコンは、その後投げられたスリッパに額をぶつけられたのだった・・。
「あ、買い物に出かけるのかい?」
 プチ騒ぎを耳にしたマルスがひょいと顔を出した。
「出かけるなら、僕も一緒にいいかな?興味があるんだ。」
「そうか、マルス君は王子だからね。庶民の生活が気になるのかな?」
「そ、そういうわけでは・・でも、王族でない暮らしが気になってるけど・・。」
「一緒じゃねぇか!!」
 マルスの答えに一同はいっせいにツッコミを入れる。
「いいよ。行こうか?」
「ええ!ぜひ!」
 マルスは嬉しそうだった。やや世間知らずな感じもしないでもない。
「ルイージさん、俺もいいでしょうか?買いたいものがあるんです。」
 リンクも名乗り出た。
「いいけど・・。ほしいのがあるなら買ってくるよ?」
「いえ、見ないとわからないものなので・・。」
 それが何なのか気になるが、ルイージには異議はないようだ。
「あ、なら僕も!」
 こどもリンクも出てきた。
「あ、リンク(小)もお菓子を買いに?」
「うん!それに大きい僕と同じ理由もあるんだ。」
「え?俺?」
「ルイージさんのお手伝いだよ!買い物といっても荷物が多くなるかもしれないじゃん?」
 こどもリンクの思わぬ言葉に、リンクは思わず声をあげる。
「お、俺、そんなこと言ったっけ?」
「ごまかさなくていいよ。僕は知ってるから。」
「ちょ・・ちょっと待て!俺は・・・。」
「ありがとう。リンクくん。助かるよ。」
「・・・・・・・・・・。」
 子供リンクに食って掛かるリンクに、ルイージが声をかける。それからリンクは黙ってしまった。
「じゃ、行ってくるよ〜。」
 そして、ルイージ、カービィ、ネス、こどもリンク、マルス、リンクは出かけていった。

「じゃー、私はおやつにドーナツでもあげようかな?お菓子作りの材料は残ってるはずだし。」
 ピーチはやや大きめのナベを出した。
「え?ピーチさん料理やらないんじゃ?」
 さっきから話を聞いていたロイが目を丸くした。
「誰もそんなこと言ってないわよ。私だってお菓子は作れるわよ!」
「姫のケーキは絶品だぞ!今度食べてみたらどうだ?」
「マリオ、今ケーキの材料は足りないのがあるの。ごめんね。」
「残念。今度買って来てもらっては?」
 マリオ、他力本願。ピーチも納得してるが。
「ところでフォックス、ファルコとかいう奴は?」
 ファルコンが居間を通りかかったフォックスに聞く。
「先ほど決めた自室で寝込んでます。相当ひどかったようで・・。船酔い。」
 確かに、ファルコの船酔いは重症だった。荘に入るなり、いきなりトイレへ駆け込んでいたし。
「クッパも疲れたとか言って、部屋にいるしな。ガノンドロフは?」
 今度はマリオが疑問に思った。
「シークを追っかけて走ってた。たぶん、からかわれてるんじゃないか?」
 なんともいえない沈黙が走る。
「話が合いそうだから、今夜の飲み会にでも誘おうかと思ったんだが・・。」
「ま、夜には集まってるだろ。」
 どうしようもない会話も中断される。
ぼこっ!!
 突然マリオの後ろ頭を何かがぶつかった。
 後ろ頭を押さえ、うめくマリオ。
「あ〜、マリオ。いたんだ!ごめんな〜。ぶつかったか?」
 出てきたのは、ドンキーだった。ピカチュウ、ピチューとボール遊びをしていたらしい。
「部屋の中で遊ぶんじゃねぇ!外へ行け!」
 マリオがキレる。当然か。
「え〜、でも今、ヨッシーが花壇に水やってるし〜。ヨッシー、花壇荒らすと怖いから。」
「荒らさないように遊びなさい!」
 今度はファルコンがなぜかキレた。
 ドンキー達は慌てて逃げ出した。
「まったく・・・。」
 そう一息ついたとき、今度は外から騒ぎが。
 割と大声だったので、気になり外へ顔を出す。
「なんだなんだ?」
 マリオがそう言ったときに、足元にいたプリンがこう言った。
(ああ。ドンキー達がボール遊びしててさ、使ってたボールが運悪く花壇に入っちゃったのよね〜。)
 1回くらい仕方ないだろ・・・とマリオは思ったが、次のポポとナナの言葉で、諦めることに。
「1回目はバレずにすんだけど、どんどん花壇の中にボールぶち込んだからさ〜。」
「結果、花壇の花はめちゃくちゃになって、ボール取りに行ったときに運悪くヨッシーに見つかって・・・。」
「今の騒ぎ、ってか。」
 マリオの最後の言葉に、ポポとナナは同時にうなずいた。
「ごめん!ごめんって〜!」
「ここまで荒らして、もう許しません!!」
 ヨッシーが怒りの形相でドンキー達を追い掛け回している。タマゴも投げたようだ。
「あーあー、騒がしいったら・・。」
 その後、部屋にいたクッパとファルコに無茶苦茶怒られ、さらに騒がしくなったという・・。

「・・騒ガシイナ。外ハ。」
「私は騒がしいのは嫌いだな。・・・ほれ、ここはどうだ?」
「ム・・・ヤルナ・・・。」
 外の騒ぎをよそに、ミュウツーとゲームウォッチは静かにチェスをやっていた。
「ナラ、ナゼココヘ来タ?」
「・・・歯ごたえのある奴がいると聞いていたら・・・。」
「ソノウチ慣レルダロウ・・?」
 2人の会話は落ち着いていて、かつ異色だった。
 そして、ジジくさい。

「えーと・・ここはだいたいこれだけそろえればいいかな・・?」
「ルイージさん、買いすぎだよ。何もテーブルクロスまで買わなくても・・・。」
「・・・シミ汚れが取れないんだよ・・。前に使ってた奴。」
 疑問をもったこどもリンクに、ルイージは疲れた声で言った。荘にあったテーブルクロスはコーヒーを こぼしたまま放置された跡がそのまま残り、洗濯しても消えそうになかった。
「カーテンやシーツも買いだめしてますね。」
 リンクもそれらを手に持っている。
「ゴメンよ。だいぶ傷んでいたから。」
 買い物に出かける前に、家具の状態をおおまかにチェックしたルイージであった。
「ところでリンク君。買いたいものがあるって言ってたけど、いいの?」
「・・あ!ええ。・・見つからなかったので・・。」
 リンクがなぜかしどろもどろになる。後ろではこどもリンクがくすくす笑っている。
「ルイージさぁん!かってきたよー!」
「今晩の夕御飯の材料!」
「・・この子ら、お菓子も買ってたよ・・。」
「あー!マルス、ひどいや!内緒だって言ってたのに!」
「あ・・ごめんごめん・・。」
 食って掛かるネスにマルスは謝った。
「あはは。いいよ別に。僕も余計なの買わせに行かせちゃったし。」
 ルイージも笑って許した。
「余計なもの・・?」
「これだよ、これ。」
 みんなの問いに、ルイージはそっと教えた。
「さ、次は・・。」
「まだあるんですか?」
「ううん。帰るよ。・・ちょっとからかってみたかっただけ。」
「もう!驚きましたよ。」
 リンクが言ったときにはすでにみんなは歩いていた。
「リンクくーん!置いてくよー!」
「あ、待ってくださーい!」

 そして、日が暮れ始めた。
「おいおい、ルイージの奴、こんな早くに夕飯の準備をしてるぜ。」
「5時過ぎたばかりだぞ?早くないか?」
「人数が増えたから、その分早くしないといけないんじゃないの?」
 ぼそぼそと話をするマリオとファルコンに、サムスが後ろから声をかける。当然、2人はビビる。
「ヒマなら手伝ってきたら?説教の数が減るかもね。」
「なっ・・!馬鹿言え、こんなこと俺が・・・。」
「じゃあ、なんでのぞいているのかしらね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 2人は黙ったままだった。すると。
「何ひそひそ話をしているんだい?」
 ルイージがいつの間にか立っていた。
「ああ。こいつらがお手伝いしたいって。」
「は?いつそんなこと言った?」
「ヒマなら行ってきなさい!ルイージ、こいつら貸すから夕飯頑張って。」
「あ、ありがとう・・・。」
 ルイージが半信半疑な態度を見せる。
「そうだ、サムスもヒマだろ?手伝ってやれよ!」
 不意にファルコンも言い出した。
「え?わ、私!?」
「そうだぞ!ヒマなら手伝えよなー。」
 マリオも乗ってきた。
「・・・仕方ないわね。今回だけよ。」
 サムスが意外な答えを出したので、マリオとファルコンは目を丸くした。
「・・ありがと。3人とも。ちょっとやってほしいことがあるんだ。」
「何だ?」
「実はね・・・・・。」

「・・・なんだ?飯の匂い・・か?」
 さっきまで自室で寝ていたクッパが目を覚ました。
(クッパおじさん〜、いつまで寝てるの?もうご飯だってさ。)
 ピカチュウがクッパのところへ呼びにきたらしい。
「ああ、スマン。寝入ってたようだ。」
(じゃ、先行ってるよ。)
 ピカチュウはこうして部屋から出て行った。
「そういえば、ここに来てから食うものはテイクアウトばかりだったからな・・・。」
 クッパは寝ぼけたままリビングへ向かう。
 すると、もうすでに、食事の用意がされていた。
「おそいぞ!もう食ってるからな。」
 マリオが小皿を片手に料理を食べていた。
「ふふ、クッパさん、よっぽど疲れたのですね。」
 ゼルダも小皿を手にしていた。
「バイキング形式だって。キッチンにご飯あるから、自分でとって食べてって。」
 みんなすでに食事をしていた。いつもと感じが違う気がした。
「・・これ、誰が用意した?」
 クッパが不思議に思い、みんなに聞く。
「俺とファルコンとサムスで盛り付けたぜ!作ったのはルイージだが。」
「マリオ、盛り付けの私らをメインにして言わない!」
 マリオの答えに、サムスがさりげなく突っ込む。
「キサマが作ったのか?これだけのものを。」
 クッパが食べながらルイージに聞く。
「・・そうだけど。人数が多いからこのような形にしたけど。」
 ルイージはやや引き気味だ。口に合わないのかと不安なようだ。
「まずくはないな。・・うちの料理人として来ないか?」
「・・素直じゃない奴。」
「マリオ!そんなことより、彼は私のところだって狙ってたのよ!マリオの方からも言ってやってよ! ルイージに『うちで料理長として来ないか』って!」
「あの・・。僕抜きで勝手に話を進めないでください。」
 異様な盛り上がりをみせるクッパ、ピーチ、マリオに対し、ルイージの小さなツッコミ。しかし、聞こえるはずがなかった・・。
「マリオー!!早くこーい!」
 ファルコンがマリオを呼ぶ。その声はどこか軽い。
「酒サイコー!飲むずぇ〜!」
「きゃ〜♪今夜は飲むわよ〜!キャハハハハハハ♪」
 ファルコンとサムスがすでに出来上がっていた。えらい変わりようだ。酒が入るとこうなるらしい。
「ふん、飲んで笑ってられるのはいいよな。そういうのって馬鹿じゃねぇんか?その点俺なんて飲んでも 酔えないからつまんねぇんだよな。まったく嫌になっちまうぜ。」
 ガノンドロフが顔を真っ赤にして何かぶつぶつ言っている。怖い。
「待ってろ、今行く!」
「私も行くわ〜!面白そうだしv」
 マリオについていこうとするピーチに、ルイージが止める。
「姫、歳いくつですか?」
「やぁねぇ!レディに歳聞くなんて!」
 ピーチはルイージの腹にパンチする。ルイージはその場でうめいていた。
「おい、ミュウツーとかいったか。キサマもすみっこにいないで、飲め飲め!」
 クッパはミュウツーを引きずり出し、置いてあった酒を飲ませる。
「!!」
「お、いい飲みっぷりだな!」
 ミュウツーは勢いで飲んでしまった。すると。

ばたり。

 その場に倒れてしまった。
「よえぇな。まったく。」
 ファルコンはやはり顔を真っ赤にして言った。
「つか、君ら飲みすぎ。」
「何を言ってんだ。これだけ買ってきたの、おまえだろうが。」
 ファルコンは2ダースもの酒の缶を指差す。やっと全員集まった記念日として、たまにはと思い ルイージがマルスたちに買わせてきたものだった。
「つか、俺も飲みてぇ。」
 ファルコが缶を手にとる。
「こらファルコ!おまえはまだ未成年だろ!」
「じゃあフォックス、おまえはどうなんだ?以前飲んだとか聞いたが。」
「あれは事故だ!ジュースかと思って・・・。」
 とにかくファルコが駄々をこねるので、ルイージがある飲み物を持ってきた。ビールっぽいが・・。
「ファルコくん。これを。」
「お、話がわかるじゃねぇか。」
 ファルコはルイージから飲み物を奪い、飲む。が。
「うぉい!これ烏龍茶じゃねぇか!泡立ててみせるんじゃねぇ!」
 ルイージが出したのは泡立て烏龍茶だった。泡立てればビールに見えるのだ。
「未成年が飲んじゃダメだよ。ジュースがあるから、それでも飲んでなさい。」
 きっぱりと言われたので、ファルコは何も言い返せなくなった。
「そういえば、ルイージおまえ、飲んでるとこ見たことねぇな。」
「あ、見たいわ〜♪キャハハv」
 そういうなり、ファルコンとクッパでルイージを羽交い絞めにする。ちなみにクッパもピーチも すでに出来上がっている。テンションが非常に高い。
「ま、待て!ぼくはお酒は苦手だ・・。」
 しかし、言いきる前に、マリオがルイージに酒を飲ませてしまった。
 飲んだ途端、ルイージはぱたっと倒れる。
「おいおい、こいつもよえぇな。ミュウツーもぶっ倒れてるのに。」
 すでに出来上がっている酔っ払いには説得は無駄なようだ。青年子供動物メンバーはリビングから避難していた。
「どうして?入っちゃいけないの?」
「・・なんか嫌な予感がするから。」
 ネスのもっともな質問に、マルスは心配そうに成り行きを見守っている。

 ルイージの意識は朦朧としていた。
(ちょっと甘やかすとすぐこれだから・・・。)
 彼はぼんやりとしながらも、心の中で思った。
(そもそも僕が悪いのか?こうなることがわかっていたくせに・・。てか、何でいつもいつも 僕ばかりがこんな目にあうんだ?肝心なときには誰も来ないし・・。ああもう、何もかもわからなくなってきた・・。 やっぱ来るんじゃなかったのか・・?)
 ルイージは不意に立ち上がった。
「お、起きたか。いきなり倒れたからちょっと心配したぞ。」
 マリオが能天気なことを言った。しかし、そのひとことが引き金となった。
「おまえらぁぁぁ・・・!いいかげんにしろやあああああぁぁぁぁ!!」
 ルイージは大声で怒鳴りだし、表情が豹変した。
 そして、戦が始まった。
 ここにいたメンバー全員が初めて知ったことだった。
 普段おっとりしたルイージが、実はとんでもない酒乱だということ。
 酒を拒んだ理由はそのことだからと、はっきりとわかったのだという。
 他の酔っ払いを散々怒鳴りつけながらそのまま窓から外に出たので、避難していたメンバーは急いで 後を追ったのだった。
 ちなみに部屋は地震が起こった後のようで、悲惨な状態になっていた。・・まあ原因はルイージだけでは ないのだが。
 で、当のルイージは何をしていたかというと、とにかく怒鳴っていた。
 ただし、酔っ払いではなく、ヨッシーの花壇の花に、である。
「なんとか言ったらどうなんだぁ!黙ってちゃわからないんだよ!」
 そう言いながら、とにかく大声で罵倒していたのだった・・。
 ちなみに当の酔っ払いどもはすでに酔いつぶれていた。

「まったく、俺のことを忘れてもらっちゃ困るな。俺はまだ酔ってねぇってのに。どうせ俺なんて忘れっぽい 存在なのかな。やんなるよな、ホントに。」
 違った、ガノンドロフはまだぼやいていたのだった。酔いつぶれずに。

「まずい、このままだと近所迷惑になる!」
「早く止めないと・・。」
「でも、どうするのさ?」
 他のメンバーは緊急会議を開いた。
「今のルイージは危険です。・・方法としては、遠距離攻撃で気絶させるか、素早く一気に近づいて みぞおちに一発、でしょうね。」
 ゼルダの提案に一同は納得。しかし、どうやって、だ。
「いずれも遠距離攻撃は気絶させるほどのパワーはないと思う。むしろ逆効果だろうな。」
 フォックスの言葉で、遠距離攻撃は却下となった。
「じゃあ、一気にちかづくのは・・・?」
「・・・やってみるか?ファルコ。」
「遠慮しとくぜ!」
 あまりの怖さに全員腰が引けていた。すると、意外な人物が。
(やぁねぇ。あたしを忘れちゃ。一発歌わせてもらうわ!)
「プリン。・・そうか、その手があったか!」
 プリンが窓辺にたつと、深呼吸して歌いだした。
 それはとても聞きごこちがよく、安らかな気持ちになれる歌声だった。
 やがて、酔っ払っていた奴らも心地よく眠りだした。
 もちろん、酒乱状態のルイージもだ。
 そして、うっかり耳を塞ぎ忘れたほかのメンバーもぐっすりと眠り始めたのだった・・・。

 そして、朝が来た。
 いつもよりまぶしい日差しを目に受け、ルイージは目を覚ました。
「う・・う〜ん・・。」
 不意に起き上がり、ルイージは周りを見た。
 そこは部屋ではなく、荘の庭だった。横にはマリオ、クッパ、ファルコンの姿もあった。
「・・何でこんなところで寝てたんだっけ?」
 窓の方を見ると、他のみんなも熟睡していた。
 なぜか、顔にはマジックでラクガキがされていた。
「・・まさか・・・。」
 そのときにプリンが出てきた。彼女だけ何もなかったかのようだった。
(やぁっと起きたのね!)
「・・プリン、つかぬことをうかがいますが、これは一体どういうことで・・?」
 ルイージはおそるおそるプリンに聞いた。
(ああ。あなた昨日、お酒飲まされたじゃない。すごかったわよぉ!)
「はあ・・・。」
(とにかく花壇の花に怒鳴りつけたり、部屋をめちゃくちゃにしたりと、誰も止められない状態だったわ。)
「・・・・・・。」
(仕方ないから歌ってあげたわ。でも、みんな寝ちゃったから、ちょっとむかついたんでラクガキしてやったわ。)
「・・・お手数かけました。」
(さ、みんなを起こした起こした。片付けないといけないでしょ?)
「・・・そうだね・・・・。」
 ルイージは一度洗面所へいった後、フライパンとおたまを手にして戻ってきた。

「まったく、俺らまで片付けに参加せにゃいかんのか。」
「ごちゃごちゃ言ってないで!元はといえば、君らが悪いんだから!」
 文句をぶつぶつ言うファルコンにルイージが本気で一喝。
 昨日の夜に起こったことを、プリンだけでなく、他の人たちからすべて聞いたルイージは恥ずかしく思い、 そして、その怒りをもともとの原因と思われるマリオ、ファルコン、クッパにぶつけて片付けを手伝わせたの だった。
「マリオ!キサマの弟だろう!なぜああなると教えなかった!」
「知るか!俺だって知らなかったんだよ!あいつ酒飲まないから・・。」
 マリオとクッパがぶつくさ言っていたが、背後にルイージが怒りのオーラを放ちながら立っていたので、 黙って掃除を始めた。
「そうそう、それから・・・君らは1ヶ月間、禁酒令を出すよ!飲んだら次の日1日間食事抜き!」
 相当怒っているようだ。まだ発散ができてないらしい。
「そんな!許してくれぇ!!」

 結論。酒を嫌がる人には無理に飲ませちゃいけません。
                                                 おわり。

4〜9話にかけた「新たなる予感」の後日談です。長すぎ・・。
前半はまともだったのに(?)後半が見事に壊れました・・・。
でも、普段おとなしい人ほどキレると怖い、といいますし、ねぇ?(同意を求めるな)
今回は何気にルイージばかりでしたが、今後も彼には様々な苦労が来ることでしょう(オイ)
なんかいじりやすいというか、家事になじんでいるっぽいというか・・・。
最後に、純粋なルイージファンのかた、ごめんなさいです。