2話:いざ、生活はじめ

 

 ここへ来て、5日目、まだみんなここの生活には慣れていないみたい。
 まあ、まだ5日しかたっていないから、仕方ないわね。私なんて、初めての集団生活なんだし。 集団生活といっても、みんなで協力して生活っていうのが、初めてなの。いつもは家臣たちが 世話をしてくれたから・・・。

 あ、まだ名乗っていなかったわね。私はピーチ。一応キノコ王国のプリンセスなんだけど、ここでは こんな肩書きは意味ないみたい。だって、ここではみんな対等、というスタンスのもとで成り立っているみたいなんだもの。 ・・・一部の人は言葉づかいは気を使っているみたいだけど。  今のところ、新しく来る人はいないんだけど、今いるメンバーだけでも充分楽しく暮らしているわ。 だけど、マリオやクッパ、それにヨッシーにドンキーまで来ているとは思っていなかったわ。他には、 ポポとナナが相棒同士だったり、確かリンクとゼルダが知り合いのようだけど、他はみんな出身が違う 様子。うちだけ人数多くない?
 まあ、それはともかく、みんないい人ばかりでよかったわ。・・・クッパはどうかって?
 彼はこういうときはけっこういい奴となってるから不思議なものよ。・・・まあ、いつもとあまり 変わらないけどね。よくマリオとケンカしてるけど、私にとっては見慣れた光景だから、全然気にならない。 むしろ、仲いいんじゃないかと思うくらいよ。

 ま、そんなことはどうでもいいわ。私が言いたいのは、ある人のこと。私と同じ、ここへ初めて来た人で、 同じ姫のゼルダのことよ。
 彼女、一見しっかりしてそうで、どこか近寄りがたい感じがしたんだけど、実際はけっこう人間くさいところが あって、最近ちょっと安心したわ。2日前にはこんな事があったっけ。

 そう、それは夕食をとった後、出したお皿を片付けようとしたところね。そのとき、ゼルダが、
「私がやりましょう、お世話になってばかりではいけません。」
とか言って、片付けはじめたんだけど・・・。問題はその後よ。

がしゃーーーーーーーーん!

 とんでもない大きな音がして、その後さらにその音が何度か連発したわ。
 嫌な予感に足が震えながらキッチンに行くと、案の定、豪快に割れたお皿が散らばっていたわ。
 その大きな音に、他のみんなも気がついて、集まってきたっけ。
「ご、ごめんなさい!今片付けますので・・・!」
 一体どれだけ割ったのか、ゼルダは割れたお皿を片付けようとしゃがみかかった。
「ちょっと待ってください!姫!」
 大慌てで声をあげたのは、確かリンクだったっけ。服が緑色だから、知り合いと勘違いしたっけ。
「動かないで下さい!怪我をしますよ!!」
 リンクが血相を変えて叫ぶものだから、ゼルダだけじゃなく、私やみんなも動けなくなったっけ。
 リンクがどこからもってきたのか、ほうきとちりとりを手に、お皿を片付けている。
 どうこうしているうちに、散らかったところがすっかりきれいになった。
「皿は俺が片付けますから、姫はおとなしくしていてください。」
 リンクは半泣きでお皿を洗い始めたっけ・・。

 それだけじゃなく、他にもこんな事があったわ。それは昨日のことだけど。

「いつもお店でテイクアウトというのも飽きるでしょう、何か作ります。」
「え?ゼルダ姫、料理できるの?」
 ゼルダのひとことがとても信じられないことのように、さっき声をあげたネスをはじめ、みんな騒ぎ出したっけ。
「初めてですけど。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 みんな黙ってしまったわ。そのあまりにも重い重い沈黙の中、ゼルダはキッチンへ入っていったわ。
 あまりにも不安なんで、私とリンクと、あとマリオとフォックスがキッチンをのぞくことにしたけど・・・。
「あ、姫が包丁を手にしました。」
 材料を切るのね、でも、その材料が見当たらないんだけど・・・。
「あ、探し出しましたよ。」
「・・・て、オイ!包丁手に持ったままじゃないか!」
 そう。ゼルダは包丁を手に持ったまま材料を探し出したの。このままじゃ危ないわ。何とかしなきゃ。
「姫!包丁持ったままうろうろしないで下さい!」
 リンクが大声をあげて、止めにかかったわ。でも・・・。
「あら、リンク、どうしました?」
 包丁を持ったまま、リンクの方を向いたわ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
 リンクはかなり青ざめてたわ。剣を使っているのに、ちょっと情けないわね。
「ピーチ姫!そういう問題じゃありませんて!」
「マリオさんの言うとおりです!危なっかしい!」
 マリオとフォックスまで大慌てだったわ。私、何かまずいこと言ったっけ?
 ・・・・結局、その日のご飯はテイクアウトだったわ。誰か作れる人はいないの?

 どうもゼルダは、頭はいいんだけど、それ以外は全然ダメみたい。掃除も大雑把だし、よく物は落とすし、 誰かがそばにいないと不安でしょうがないわ。
 あ、頭がいいというのは、前にゲームで対戦したときだわ、そのときに心理作戦に引っかかって、見事に 負けた事があったわ。それも何度も。勝負は強いみたい。

 そうだ、私、買い物の途中だったわ。1人で思い出にふけっている場合じゃないっけ。まったく、なんで、 なくなる前に補充しないのかしら、お風呂と、食器と、服の洗剤に、シャンプーとリンスにボディソープ、 歯磨き粉にトイレットペーパーなんて。前は誰が管理していたの?この中にはいないのかしら。まったくもう。
 あ、愚痴ってもしょうがないね、今のところ、新人が来るまでは今いるメンバーで何とかやっていくしかないしね。

 スーパーで無事、買い物を済ませた後、どこか寄り道していこうかな、とも思ったけど、何しろ、この荷物。トイレットペーパー の量が多くて、とてもじゃないけど、寄り道できる状態じゃないっけ。
 仕方ないから、まっすぐ帰ろうとしたわ。
 そのとき、反対側の道で、ふと気になる人が通っていったわ。

 金髪に、どこの国の人かなんとなく想像できそうなターバン、よくは見えないけど、マフラーで隠れた 浅黒い肌・・・。
 初めて見る顔だけど、なんか、どこかであったことのあるような感じがしたわ。
 私はしばらくその人を見ていたけど、その人は私に気づいた様子はない。横断歩道をわたって、こっちに来ても、 私が見ていることには気づいていないわ。・・・鈍感?
 何でじっと見ていたかって?それはまず、さっき言ったとおり、なんかどこかで見た感じがしたから。それと、 まだそんなに寒くないのに、マフラーとコートといった、冬の重装備で外を歩いていて、怪しいと思ったから。

 そのとき、その人から何かが落ちた。カードみたい。

 それを拾い上げると、なんと、スマブラ荘に入るためのカードキー(と思われる)だった!
 そのカードは、スマブラ荘に入るのには必ず持っていなければならない・・・と思うんだけど、みんな 全員持っているものよ。まだ詳しいことはわからないけど。
 え・・・?その人、新人?
 私はそれをその人に届ける。すみません、これ、あなたのですよね?
「・・・ああ、ごめん、落としたみたいだ。ありがとう。」
 声は男性とも女性ともとれそうな感じだった。カードを受け取ると同時に、今度は財布やら、鏡やら いろいろ落としてる。・・・危なっかしいなぁ。
「いや、本当に、ごめん。」
 真紅の瞳が私に向けられる。・・・ちょっとビックリした。
 気をつけてくださいね、・・・なんか、彼女を思い出すなぁ・・・。ゼルダに似てるかも。
 財布とかをしまった後、その人は立ち去った。
 ・・・・けっこうカッコいい人かも。そういえば、名前を聞いていなかったっけ。

「ピーチ姫ー!」
 あら、その声はリンク。どうしたの?
「いや、あの、このあたりでゼルダ姫、見かけませんでしたか?」
 ううん、見てないけど。どうかしたの?
「ああ、実は姫、誰にも行き先を告げずに外出したみたいなんです。」
 それが?そのうち帰って来るでしょ?
「姫、このあたりの道を知っているでしょうか?あまり外に出ないから、道順とか覚えるの、得意とは思えないのです。」
 うーん、それだったら、そんな遠くに行ってないと思うけど・・・。
「だと、いいんですけど・・・。」
 リンクがそれでも心配そうな顔をする。
 そうだ、そういえば、このあたりでなんかちょっとドジな男の人が歩いていて、その人がスマブラ荘の カードを持っていたんだけど・・・。
「どんな方だったんですか?」
 んーーー、金髪で、浅黒い肌、ターバンを頭にしてて、顔を半分隠している人だったな。そうそう、真紅の 瞳をしていたわ。
「!!その人はどっちへ向かいました!?」
 私と反対方向へ向かったけど・・・。どうかしたの?
「姫の行方がわかりそうなんです!」
 え?私が話したのは、通りかかった男性の話よ?それが何か関係が?
「話は後です!今は姫を見つけます!」
 ま、待ってよ、私も行くわ!

 男性が立ち去った後に、リンクがきたため、幸い男性との距離は大きくなかった。走っていったため、 男性にすぐに追いついた。
「シーク!」
 リンクが大声で呼ぶ。この人の名前かしら?だとすると、リンクの知り合い?
「・・・リンクか・・。」
 男性・・・シークはリンクのほうを向く。なになに?
「いったいどこへ行ってたんだ?」
「・・・何のことだ?」
 ???第三者の私にはさっぱりわからない。リンクの次のセリフを聞くまでは。
「誰にも行き先を告げず、出かけてしまって、心配したんだぞ!シーク・・・いや、ゼルダ姫。
 ・・・・え?リンク、今、なんて?
「ふう。ここならバレずにいられると思ったんだけど・・・。仕方ないか。」
 男性から一瞬光が発された。そして、その光が弱まってきたとき・・・シークの姿はなく、かわりに 女性の姿・・ゼルダの姿があった。
「ここなら私を知らない人が多いし、時々変身して遊びに行こうかな、と思って・・・。」
「このあたりの道がわかるのですか?」
「・・・わかりません・・・。」
「・・・・迷子になってたらどうするつもりだったんですか・・・?」
 あのー、お取り込み中、失礼しますが、いったい何事ですか?わかるように説明してください。
「ああ、すみません。実は、シークはゼルダ姫が変身した姿なんですよ。」
 ・・・・・?状況がさっぱりつかめないんですけど。
「姫は魔法を使って変身できるんですよ。」
 な、なるほどね・・・。でも、ゼルダ、どうしてそんなことを?
「だって、外出はいつも誰かと一緒でなければダメだってリンクやみんなが言うから・・・。たまには私も 1人で羽をのばしたいな、て思って・・。」
 まー、私も地図もらってやっと外出できたし・・・。慣れるまではついててもらったほうがいいかもね。
「・・・姫の気持ちはわかりました。ですが、外出するときは誰かにひとこと声をかけていってくださいね。・・心配ですから。」
 リンクも心配性ねぇ。でも、シークのこと、みんなにも話しておいたほうがいいんじゃない?
「そうですね。俺もそうおもっていました。」
「えー。話すんですか?」
「そりゃそうですよ、また変身して大騒ぎになっても誰かわからなきゃ、対処できないでしょう!」
 リンクのセリフにゼルダはふくれっ面になる。こんな表情もするんだ・・・。

 嫌がるゼルダを何とか言いくるめ、リンクはみんなにシークを紹介した。

「へぇ。ゼルダ姫にこんな人格があったんだ。」
 ま、マリオ・・・、人格って・・・。
「だって別人みたいじゃねぇか。」
「あまり細かいことを考えすぎてはいかんぞ、ピーチ。」
 ファルコン、クッパまで。あんたたち、いつの間に息ピッタリになってたの?
「まあ、改めてよろしくお願いします、シークさん。」
「よろしく〜!」
 フォックス、カービィをはじめ、仲間のみんながシークに挨拶をする。
「よ、よろしく・・・・。」
 彼もある意味、新人、かしらね。
(そういえば、シークでいる間、ゼルダの意識はどうなってるの?)
 ピカチュウ、どういう意味?意識は一緒じゃないの?
「僕はゼルダとは別人格なんだ。ただし、行動はほとんど同じだし、記憶も片方で起きたことは、もう片方でも 覚えているよ。」
「へぇ・・・。」
「不思議なものだね。」
 サムスとドンキーが妙に納得してる。・・・わかってんのかしら。
「また、時々変身してくれる?」
「もう変身しないんじゃ、あまりにもあっさりすぎるし〜。」
 ポポ、ナナ、あんたたちは後先のことは考えているのかしら。
「いいじゃん。たまには出てきてほしいよ。」
「大騒ぎなんて、ここじゃ日常茶飯事ですよ、ね?みなさん。」
 ネス、それにヨッシーまで!日常茶飯事って、毎日こんな騒ぎがあるの?
「今回は全然軽いほうですよ、姫。」
「前にいたときはもっとすごかったもんな。」
 マリオ・・ファルコン、そんなものなの?
「慣れりゃ、ずいぶんと楽しくなるわよ。」
 サムス、慣れるまでどれぐらいかかりそう・・・?
「さあね。私も知らない間に慣れてしまったみたいだし。」
 ・・・私が細かく考えすぎているのかしら。もう、考えるの、やめよう。

 今回はゼルダの意外な顔をみれて、だいぶ驚く事があったかな。でも、ここでは、こんなものはまだまだ 朝飯前、といったレベルみたい。
 私もここの雰囲気に慣れる事ができるのかと思いながら、生活をつづけることになる。まぁ、気楽に いくとしますか。
 しかし、新たに追加で来る人たちって、どんな人達なのかしら。前には12人いて、今いる前メンバー は10人とか。残りの2人はくるのかしらね。

                                                  終わり。

シーク登場編でした。しかし、前がマンガでやっていたため、文にするのはかなり難しいです。今回もまた、 文章がおかしいです。
今回はだいぶ登場キャラがかたよった感じです。ピーチ視点でお送りしました。今後も誰かの視点で 書いていこうと思います。しかし、ゼルダ、かなりの家事オンチと判明(笑)天然ですから(どんな理由だ)