6話:新たなる予感・到着編

 

 大波乱な航海が一段落し、全員が船から降りる。
 しかし、あまりの騒動から、全員の顔に疲労の色が見える。
「うう・・・、ぼく、船酔いした・・・。」
「お、オレも・・・。うぇ・・。」
 ドンキーとリンクは真っ青で、歩き方が酔っ払いのごとく、ふらふらだった。
「だ、大丈夫?みんな・・・。」
 ルイージが全員の様子をうかがう。
「まず自分の心配をしたほうがいいんじゃないか?おまえ。」
「そうだぞ、まともに立ててないぞ。歩けるか?」
 そう、ルイージも見事にふらふらで、歩こうにもすぐ転んでしまうのだった。
 それをマリオとファルコンに指摘され、そのまま動かなくなってしまった。
「まったく、しょうがねぇな。運んでくわ。」
 ファルコンはぐったりとしたルイージを背負って歩き出した。
 普段からとにかく動き回るマリオに、命がけのレースに参加するファルコン、数多の戦をくぐりぬけてきた サムスに戦闘機で戦うことが多いフォックス、なぜかピーチとゼルダは平然としていたりする。
 あまり揺れに慣れていないドンキー、リンク、プリンは船酔いし、ヨッシー、ピカチュウ、ネス、カービィ、ポポ、ナナ はだいぶ疲れたようであった。ピチューは失神中。
「ねぇ、行く前に休んだ方がいいんじゃない?大半がこれじゃ、バラバラになるわ。」
 サムスが先を行こうとするファルコンに向かって言う。
「それに、案内役のルイージさんがこんな状態では、どこ行けばいいかわかりません。」
 ゼルダも同調する。
「それもそうだな。せめて、コイツが目を覚ますまで休むか。」
「これを飲ませておけ。少しは回復するだろ。」
 ファルコンはその場にルイージを降ろし、マリオが彼に栄養ドリンクを飲ませる。
「何飲ませたの?マリオ。」
「キノビタン8です。ピーチ姫。」
「まあ、キノコ王国にある、キノコ人に効くという、あれ?」
「つか、キノコ人用のドリンクを飲ますなよ・・・。」
 マリオとピーチの会話を聞き、クッパが疲れた声でツッコミを入れる。

 ルイージが目を覚まし、他のメンバーが体力を回復するまでにそれから約1時間かかったという・・。

「全員回復した?それじゃ、案内するよ。」
 やや顔色が悪いが、とりあえず動けるようになったらしい。
「大丈夫ですか?まだ疲れてるみたいですが・・。」
 ヨッシーが心配そうに言う。
「まだ口の中がおかしい・・・。苦いというか、すっぱいというか・・・。」
「良薬は口に苦し、というだろ?ルイージ。」
「・・・にいさん、何飲ませたのさ・・。」
 兄の意味深な笑顔の脇でつぶやく弟だった。

 少し歩いたところで、ピチューが急に走り出した。
(?ピチュー?どうしたの?)
 ピカチュウが慌てだす。
 すると突然、どこかから声がした。
「ピチュー?どこ行ってたのさ!かくれんぼしてたら見当たらなくなるしさ〜。」
 聞き覚えのない、子供の声だった。・・・一部を除いて。
「あら、あの声は・・・。」
 声の主が現れた。よく見るとリンクであった。・・・小さいが。
「え?オレ?オレなのか?」
 リンク(大)が驚き、慌てふためく。
「あ、大きいぼく!そうだよ。リンクだよ〜。」
 リンク(小)は落ち着いていた。
「あら、なつかしいわ。このときのリンクを見るのは。」
 ゼルダもにこやかにその様子を見ていた。
「なんだ?リンクが2人いるのか?」
「どう呼べばいいんだ?」
「なんか、どっちもあんまり顔変わんないね〜。」
 みんなが騒ぎ出した。
 すると、さらに人が来た。赤毛の、勝気な顔立ちの少年だった。年は大きいリンクとそんなに変わらないだろう。
「おーい!どうしたんだ?なんか騒がしいけど・・。」
 少年はメンバーを見るや、急に態度を改めた。
「あ、スマブラ荘ご一行ですか?」
「そうだよ、ロイ君。マルス君は近くにいる?」
「ルイージさん、お帰り!マルスならいるよ。呼んでこようか?」
「その必要はないよ。」
 ロイの後ろからさらに別の声と姿が。
 青いスーツをまとった、青い髪の若い青年だった。ロイより少し上くらいの年齢だろう。

「スマブラ荘ご一行様ですね。お待ちしていました。」
 青年は丁寧な物腰でメンバーを出迎えた。
「誰だ?あの若造は。」
 クッパはうさんくさげに言い放つ。
「こ、こら、クッパ!なんてことを!」
「あ、申し送れました。ぼくはマルス。アリティア王国の王子です。」
『お、王子!?』
 一同は目を丸くした。
「貴族なの?」
「でも、ルイージのやつ、ナチュラルに『君』付けで呼んでたし・・。」
 それから、騒ぎ出す。
「特別扱いはしなくていいよ。みんなと同じように接してほしいんだ。」
 マルスは微笑し、言った。
「いいの?」
「うん。王子扱いは自分の世界だけで充分だし。正直堅苦しいんだ。」
「んじゃ、マルス。こっちの赤い兄ちゃん・・ロイってどんな人?」
 ネスのひとことにロイが反応した。
「ぼくはロイ。リキア地方フェレ家の公子なんだ。」
「え?あなたも貴族?」
 ピーチが問う。
「そうなるかな。でも、マルスと同じように、特別扱いはしなくていいから。」
「へぇ。じゃ、ロイ、よろしくな。」
 マリオがロイに挨拶する。それを見てピーチがこう聞いた。
「ねぇマリオ、もし私が『特別扱いしなくていい』と言ったら、このように接するの?」
「・・・・・できません、姫には。」
「・・・なんか複雑ね。」
 マリオが照れながら言うので、ピーチは困ったような顔をした。
「リンクも、ですか?」
 今度はゼルダが乗りだした。
「・・今は無理です。でも、姫がそうおっしゃるなら。」
「まあ・・・。」
 こっちはラブラブな空気が流れ出した。
「さあさあ、邪魔するようで悪いけど、宿泊地へ案内するから、荷物もってついてきて。」
 ルイージが促し、マルス達も歩き出したので、一同は彼らの後について行った。

 到着した先は、かなり大きな建物だった。
 ここなら大きいイベントも開かれそうだ。
「部屋はこの建物の3階全部を貸しきりにしてあるから、好きな部屋を使っていいよ。シングルとツインの 2種類があるから、好みでどうぞ。」
 マルスが丁寧に説明するが、子供と動物メンバーにはわからなかったらしい。
「しんぐる?ついん?なにそれ?」
 ドンキーが目を回した。ネスも聞いた事がないようだった(ホテルはいつも適当に全員一部屋で済ませてたため)。
「シングルは1人部屋、ツインは2人部屋のことだよ。」
「へぇ〜。」
 全員わかったようだった。
『なあ、ダブルはないのか?』
 ファルコンとクッパが勢い込んで聞いた。
「ありません。」
 マルスはあっさりと言い切った。
「ねぇ、ダブルって?」
 再びネスが。今度はルイージが、
「ダブルはツインと同じ2人部屋だけど、ツインは1人用ベッドが2つある部屋で、ダブルは2人用ベッドが ひとつある部屋なんだ。カップルのためにあるような部屋だよ。」
「へぇ〜。」
 ネスはまた1つ大人になった(笑)。
「しかしファルコンにクッパ、、君らってこんなところでもろくでもないこと考えてるの?やだなぁ。」
「ご、誤解だ!!俺寝相悪いからシングルベッドじゃせまいんだよ!」
「ワガハイもだ!文句あるか!」
 2人は必死で弁解した。
「クッパはわかるけど、ファルコンは・・・納得か。うん。」
 ルイージは勝手に納得したようだった。
「なんか腑に落ちねぇ・・・。」

「今日は予定がないから、好きなように過ごしていいよ。この施設内をゆっくりまわってみたら?」
 メンバーは3階の休憩所でルイージから指示を受ける。
「ルイージさんはどうします?」
 フォックスが聞いた。 「僕はマルス君たちと打ち合わせがあるから・・。」
「え?マルスさんが主催なんですか?今回のイベント。」
「ん〜、正確にはお手伝い、かな?」
『え?』
「イベント進行の手伝いのアルバイトがあったからさ、それに応募したら一緒だったんだ。」
 ルイージのひとことに一同、唖然。
「じゃあ、主催は誰なんだよ。」
 マリオが問い詰める。
「僕も会った事がないんだ。仕事内容が示されるだけで。」
『あやしいと思わないのかよ!オイ!!』
 マリオ、ファルコン、クッパの懇親のツッコミ。
「とにかく!明日から指示するから!今日は自由行動!!以上!!」
 ルイージはヤケになったような口ぶりで解散令を出した。
(プリンはどうする?ところでピチューは?)
 ピカチュウはプリンに聞いてみる。
(あたしはルイージについていくわ。ちなみにピチューはリンク(小)と一緒のはずよ。)
 プリンはそう言うと、もうこの場を去ってしまったルイージのあとについていった。
「なんか、引っかかるところもあるが、とりあえず自由行動だし、遊びにいくか!」
「待ちなさいファルコン。まずは部屋を決めてからよ。」
 浮かれて遊びに行こうとしたファルコンを、サムスが冷静に捕まえた。
「じゃ、僕はドンキーと一緒で。」
 ヨッシーとドンキーの2匹は奥のツインルームへ。
「ぼくはネスとピカと一緒〜。ぼくとピカなら一人用ベッドでも充分だし。」
 カービィ、ピカチュウ、ネスは3名でツインルーム行き。
「じゃ、僕らもツインで。ね、ナナ
「そうね、ポポvv
「このマセガキどもめ・・。」
 マリオのひがみ(笑)をよそに、ポポとナナもツインルームへ。
「なぁ、ところでサムス・・・。」
「私はシングルで。」
 ファルコンが何か言い終わる前に、サムスはすぱっと言い放った。
「まだ何も言ってないだろう!?」
「どうせツインで行こうだの言おうとしたんでしょ?」
「なっ・・・!違うわ!!」
「図星ね。やあねぇ。」
 図星かどうかはわからないが、少なくともファルコンはサムスにからかわれている。
「ワガハイは1人でツインへ行くぞ。ベッドを固めておくわ。」
 クッパはそう言ってツインルームへ。全員が納得したのは言うまでもない。
「私はシングルでいいわ。一人でゆったりしたいし。」
「私も・・、そうですね。シングルで。」
「俺も。じっくり本を読みたいし。」
「それなら俺も。」
 続いてピーチ、ゼルダ、フォックス、リンクがシングルルームへ。
「じゃあ、残った俺らは・・。」
「残ってるの、ツインしかないわよ。」
「は?」
 サムスのひとことにマリオとファルコンは目を見開く。
「数えたらこの階、10部屋あって、シングル、ツインで5部屋づつよ。」
「え〜と・・。」
「シングルなら私とピーチにゼルダ、フォックスとリンクがとっちゃったわよ。」
『なぬっ!?』
 男2人は驚いた。部屋数の少なさに。
「だってここ、1番高価な部屋があるところだもの。その分広いわよ。じゃ。」
 サムスはそう言って部屋へ向かった。
 よく見ると他のメンバーも部屋へ荷物を置きに行ってしまったようだ。
 取り残された男2人はしぶしぶ荷物を持って部屋へ行くことに。
「いい歳した野郎2人で過ごすのか・・・。」
「マリオ、ダブルよりマシだ・・・。」

 残った半日を、一同は楽しんだ。
 ピカチュウはネス、カービィ、ポポ、ナナと一緒にピチューとこどもリンクのところへ行き、共に過ごした。
 フォックスとリンクは施設の設備をまわり、施設内の図書館でゆっくりと(リンクは途中で寝てしまったが)。
 ピーチはゼルダ、サムスを誘って買い物へ。服やアクセサリーを見て買い込んでいた。
 ドンキー、ヨッシーは飲食店へ。ただ食いチャレンジに挑戦し、ただいま奮闘中。
 マリオ、ファルコン、クッパは施設内のゲーセンへ。ゲーセン内では3人の叫びと嘆き声とわめき声が聞こえたのは 言うまでもない。
 船旅の疲れもすっかり忘れた一行は、空腹になるまではしゃいでいたという・・・。

 一同が施設内のレストランで夕食を済ませ、各自で部屋へ戻っていったときのことだった。
 後ろから呼ぶ声がしたのだ。
「おーい!みんな!」
 声の主はマルスだった。
「どうした?食事ならもう済ませてしまったが。」
「そうですか。て、そうじゃなくて。」
 マリオのセリフにマルスはノリツッコミを。意外とノリやすい性格らしい。
「ルイージとプリンを見なかった?」
「いや、見てないぜ。部屋に案内されたとき、あいつはお前たちと打ち合わせがあると言って、どっか行ったが。」
「ええ。その打ち合わせが終わってから僕らも自由行動にしたけど、ちょっと言い忘れた事があってさ。」
「なんだ?それ。もし見かけたら言っておくが。」
「あ、たいしたことではないから、すぐでなくてもいいんだ。自分で探してみるよ。」
「・・・・変なの。」
 マルスの態度を怪訝に思いながら、マリオはマルスと別れた。
「どうせ飯でも食ってると思うけどな。」
 マリオは普段から不規則気味な弟の生活リズムを思った。

 その夜も各自で(一部盛り上がりをみせながら)すごし、一夜が明けた・・・。

RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR・・・・・・・・・・・・・・
RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR・・・・・・・・・・・・・・
RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR・・・・・・・・・・・・・・

(う〜ん、何だ?)
 マリオは寝ぼけながら、手をまさぐる。
 音はどうやら電話のようだ。
(こんな朝っぱらから、誰だ?)
 マリオは半身を起こす。頭がガンガンする。
(うう・・昨夜飲み過ぎたか・・・・。)
 昨夜ファルコンとクッパで飲み会を繰り広げ、そのまま泥酔したまま寝てしまったらしい。 その証拠にファルコンとクッパがとなりで寝込んでいる。
 マリオは頭痛をこらえながら電話に出た。
「はい、もしもし・・・。」
『マリオさん!マリオさんですか!?』
「あ、ああ・・。」
 声はマルスだった。やけに慌てているようだ。
『マリオさん、聞いてますか?』
「聞いてる!どうしたんだ?」
『じ、実は・・・
ルイージが昨日から部屋に戻ってないんです!
 マリオはそのひとことを飲み込むのに時間はかからなかった。
 それどころか、頭痛が一気に引いた。
「そ、それは本当か!?」
『ええ、プリンも帰っていないんです。』
「連絡はなかったのか?」
『ええ、全然。戻ってくるときにも必ずみんなに連絡をくれる人だから、わかるんです。』
「・・・・・・・・・。」
『とにかく!すぐにこの階の休憩所まで来てください!他の方たちにも言っておきます!』
「・・・わかった。すぐに行く!」
 マリオは電話を切ると、まだ寝転がっているファルコンとクッパをたたき起こした。
「こら、起きろ2人とも!緊急事態だ!」
「ん〜・・何だよマリオ、まだ7時前だろ〜?ゆっくり寝かせてくれよ〜。」
「それどころじゃねぇ!こらクッパ、とっとと起きろ!!」
 がすっ!
 クッパの腹にマリオの踵落としが入る。
「うぐっ!何すんだマリオ!!二日酔いの体になんつうことを!」
「グダグダ言うな!・・ルイージとプリンが昨日から部屋に戻っていないそうだ。」
「なっ、」
「何ッ!?」
 2人も途端に目が覚めた。
「とにかく、マルスが休憩所まですぐに来い、と言ってた。」
「なんだ?失踪事件か?」
「ただ事ではなさそうだな。・・マリオ、おまえ、元気ないぞ?」
「い、いや・・。とにかく着替えて行くぞ!」
 3人は身支度を整え、急いで休憩所へ向かった。
(何があったんだ・・?これは、何かあるんじゃないか!?)
                                                 つづく。

意味深なまま今回は終わりです。続きは次回に持ち越し。
ノリが今回からやや真面目になっていると思います。ギャグが少ないしね(笑)。
あと、この話の間、書き方を通常と変えています。いつもは誰かの視点なんですが、この話の間は普通の 書き方になります。単に話の流れにいつもの書き方が合わなかっただけなんですが(汗)。
さて、今回は何回『へぇ』と言ったでしょう?(笑)
それでは、次回をご期待ください(え?)